「酒肆」について

もう少し、「酒肆」について。

古くは(特に中国では)、酒を飲ませる店を「酒舗」「酒肆」などと言ったようです。お客さんに酒や肴を出してその場で飲食させる店だけでなく、単に酒を売るだけの店も含めると思います。

公益財団法人日本漢字能力検定協会の「漢字ペディア」というサイトを見てみます。

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漢字肆


 https://www.kanjipedia.jp/kanji/0002814800


ならべるという意味から、品物を並べて売る店を表すようになったのでしょうか。

用例として「魚肆(ギョシ)」「酒肆(シュシ)」「書肆(ショシ)」などがあげられています。

肆は、数の「四」の代用字としても使われるのですね。一を壱、二を弐、三を参の書くのと同じで「大字(だいじ)」というのだそうです。他の数字との混用や改竄を防ぐために使うとのことですが、現在でもよく使われるのは、壱、弐、参、拾ぐらいでしょうから、肆が四の大字として使われるのは知りませんでした。
と思っていたら、「刀剣乱舞」や「鬼滅の刃」なんかで「その四」というところを「その肆」という表記がされているのに気づきました…


話を戻します。
酒肆を検索してみると、
「酒肆門」、「酒肆春鹿」、「酒肆大関」 といった屋号の居酒屋があるのがわかります。
ちなみに「酒肆門」は大阪・曽根崎の人気店、「酒肆大関」は神戸・三宮の炉端の老舗ですね。気のせいか、有名どころが多いような。

一方、書肆はと言うと、出版社の屋号にもあるようですが、古書店に用いられていることが多いようです。

 

酒肆にしても書肆にしても、現在では一般名詞として日常的に使われることはあまりなく、屋号(固有名詞)の一部として使われることがほとんどではないでしょうか。「この前居酒屋に行ってきた」とは言っても、「この前近くの酒肆に行ってきた」とはあまり言わない(と言うか、伝わらない)でしょうから。

ただ、「酒肆」と表記すると、なにやら風情が感じられる、文化的なおみせのように聞こえます。古くから使われてきた言い方なので、その“重み”のようなものが感じられるのかもしれません。